今回はファシリテーションについて説明します。
このスキルはとても重要で、現在の自分の業務でも必須な能力です。
一方、以前ファシリテーションについて学んだ際、共感できない面も沢山ありました。
体系的に明文化することで分かりやすいと思う一方で、ないものねだりをしているような印象も強く受けたのです。
ファシリテーションについて、どういうスキルか、実際どのように対応していくべきかについて解説します。
ファシリテーションが要求される自分の業務
私の業務の中に営業技術があります。
英語圏の顧客と中国の技術者の間に入って仕切るわけです。
想像頂けると思いますがが、簡単なことではありません。
基本的に顧客が100点満足する対応ができないことが多いので、落としどころを探し、双方にどう説明して最低限納得してもらうかを、考えなければなりません。
そして、言葉の壁もあります。(英語はイマイチレベルで中国語は話せない)
ポイントを抑えて伝える必要があります。
そこで必要となるのがファシリテーション能力です。
いやっ、心臓への毛生え薬の方が必要かも知れませんが…
ファシリテーションとは
今回は以前に受けた研修で使用した以下書籍を参考にしています。
参考書籍
日経文庫 ファシリテーション入門 堀 公俊
2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている方です。近畿大学非常勤講師。著書多数で検索すると、この方の事が多数ヒットします。
まずは、ファシリテーションという言葉の意味です。
ファシリテーション 言葉の意味
容易にすること。簡易化。促進。
これがオリジナルの意味ですが、既に『ファシリテーション』が会議などで使う対人スキルの一つとして認識している方が多いでしょう。
そして、そのような役割の人を『ファシリテーター』と呼んだりします。
スキルとしてのファシリテーションの意味
一言で言うと『集団による知的相互作用を促進する働き』
会議やPJなどの集団活動がスムーズに進むように、また成果が上がるように支援することをいう。
会議の場面の例としては、質問によって参加者の意見を引き出したり、合意に向けて論点を整理することが挙げられる。
こうした働きかけにより、メンバーのモチベーションを高めたり、発想を促進することが期待されている。
ファシリテーター
『協働促進者』と訳される。ポイントは2つ
- 活動内容そのものはチームに任せて、そこに至る過程のみ舵取り。
⇒成功に対する主体性をチームに持たせる - 中立的な立場で活動を支援
⇒客観的で納得度の高い成果
なぜファシリテーションが注目されるのか?
先ほどの書籍では、我々がファシリテーションという言葉を耳にするようになった背景について、経営学的な見地から述べられています。
基本的な課題として、近年、組織による問題解決が硬直化している。
人々は、たくさんの要因が絡み合う問題に対し、組織を構築し、たくさんの人の知恵とエネルギーを合わせ解決してきた。
しかし、変化スピードが加速度的に上昇、業務の複雑化・高度化に伴い、組織による問題解決があちこちで行き詰まりをみせてきた。
今までの手法で解決しようとあがくほど、リーダーシップの不在とマネジメントの過剰に陥ってきている。
それが、個々人の能力不足、やる気不足に原因を求めても解決しない
そのため、少数の人間が組織を率いていくのは難しく、たくさんの人々がそれぞれの持ち場でイニシアティブを発揮していくことが必要という考え方が生まれてきた。
ファシリテーションの必要性
必要とされるアプローチに変化があると解説しています。
今まで経営論では、リーダーシップとマネジメントスキルのふたつで語られてきました。
私も、ある経営者研修で、「リーダーシップ」と「マネジメント」の違いについて学んだ覚えがあります。
この本では、この二つの軸では解決できないことが増えてきて、第3の手法として、ファシリテーションがあると展開しています。
さて、このファシリテーションですが、4つのスキル分野があると解説されています。
ファシリテーションの4つのスキル
分かりやすいように、一般的な話し合いでのファシリテーションを念頭に紹介されています。
1. 場のデザインのスキル ~場をつくり、つなげる~
なにを目的にして、誰を集めて、どういうやり方で議論していくのか、話し合いの段取りをする。
最適な議論の進め方や論点を提案する。
更に、討議の時間やメンバー同士の関係性を適切にデザインして、話しやすい場を用意する。
単に人が集まってもチームにはならず、目標の共有から共同意欲の醸成まで、チームビルディングの良し悪しがその後の活動を左右します。
これが場のデザインのスキルです。
2. 対人関係のスキル ~受け止め、引き出す~
話し合いで、できるだけたくさんの意見や考えを出し合い、理解と共感を深めながらアイデアを広げる。(これを発散と呼ぶ)
出し尽くすことで、これから生み出す結論への合理性と納得感を高めていく。
このときファシリテーターは、しっかりとメッセージを受け止め、発言者を勇気づけ、心の底にある本当の思いを引き出していかなければならない。
それと同時に、意見と意見の連鎖をつくり、幅広い論点で考えられるようにする。
具体的には、傾聴、応答、観察、質問などのコミュニケーション系(右脳系・対人系)のスキルが求められる。
3. 構造化のスキル ~かみ合わせ、整理する~
発散がうまくいけば、自然と収束に向けての気運が生まれてくる。
タイミングを見計らい、個々の意見を分かりやすく整理して、議論をしっかりとかみ合わせていく。
その上で、議論の全体像を整理して、議論すべき論点を絞り込んでいく。
ここで威力を発揮するのが、議論を分かりやすく「見える化」するファシリテーション・グラフィックとなる。
ここではロジカルシンキングをはじめとする、思考系(左脳系・論理系)のスキルが要求される。
物事の枠組みを表すフレームワーク(構造化ツール)を臨機応変に活用すれば、効率よく議論が展開できる。
4. 合意形成のスキル ~まとめて、分かち合う~
結論の方向性が絞られてきたら、いよいよ決定のフェーズになる。
なにを基準にして最適な選択肢を選ぶのか、異なる意見をどうやって融合させるのか、決め方を決めることになる。
この時に避けて通れないのが意見の対立となる。
コンフリクト・マネジメントのスキルを使って適切に対処することで、創造的な結論が得、チームの結束力も高める。
ファシリテーターの力量が最も問われるところ。
首尾よく合意ができれば、結論やアクションプランを確認し、話し合いを振り返って次に向けての糧としていける。
どうでしょうか。実際はまだまだ深く体系化され解説が続きますが、解説はここまでとします。
分かりやすい様でいて、混乱してしまうのは、それぞれの局面を解説していますが、常に多様なスキルを要求されるということです。
ぶっちゃけ、人間力の高い人材が求められる、と単に言っているようにも聞こえます。
まとめ
そこで、私なりの解釈・咀嚼を述べたいと思います。
- これを読んで理解しても、劇的に変化してうまくいくようになるわけではない。
正直、話がどう広がるかわからない複数の他人を巻き込んだ会議をコントロールするのは難しいです。 - 一方、難しい協議の場で、うまく行ったとき、確かに上記のポイントでうまく対処できたことが理由となっていると理解できます。
従って、そのつもりになって練習を重ねたら効果が出る可能性は高いです。 - 知識として理解した上で、意識付けして練習するのは常套手段です。
従って、このような本を読んで知識を深めるのは有効です。
実際に実践していて、効果があるのは以下2点につきます。
- 会議の事前準備として、議題や確認したい点をリスト化して関係者に配布する。
- 会議参加者の役割とキャラクターから、どういうことを要求してくるか予想しておく。
場のデザインについては事前に準備できることがあります。
やれることは、やっておくのが賢明です。
いかがでしょうか。一度整理し、自分なりの対応を考えてみるのは良いと思います。