明日で、東日本大災害が発生してから10年になります。
東日本大災害が製造業に与えた影響はとても大きいものでした。
- 震災影響による中小企業の倒産被災地付近の製造業の倒産件数が多かった。
- サプライチェーンの脆弱性が問題になり、BCPが注目された。
- 震災地への産業誘致や産業育成が思うように進んでいない。
今、思うことを解説します。
震災影響による倒産件数
(2020年3月時点)9年間累計で震災影響倒産は2000件を超えた。
- 地域別比率;内50%弱が関東地方、25%が東北地方
- 業種別比率:22%サービス業、20%製造業 20%卸売業
やはり、地元、そして製造業に大きな影響があった。
そして、産業が以前より活性化してこそ復活を果たしたと言えると思うのですが、まだ半ばであることを痛切に感じます。
サプライチェーンの脆弱性
震災直後、基幹部品・素材の工場の集積地だったため、国内だけでなく海外工場も含め、一時生産停止などの影響がありました。
そして、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)という言葉が急にメジャーになりました。
前の会社にいた時のことです。既存サプライチェーンの点検や、災害時のバックアッププランの検討など、バタバタ実施したのを覚えています。今、それが有効な状態でメンテナンスされているのか・・・かなり疑問ですね。
皆さんの会社はどうでしょうか?
関連して、最近トヨタのニュースを見て思うことがありました。
震災直後、ジャストインタイムのトヨタシステムは在庫を持たないスタイルであるが故、悪影響が大きかったということがニュースになりました。
現在、多くの自動車メーカーでマイコン(半導体部品)の調達不足で生産調整が必要となるという厳しい状況があるといいます。
この中でトヨタだけが生産に十分な調達を維持できているというニュースがありました。
このニュースの中では、
- 震災時の課題にしっかり対応したトヨタの改革力
- サプライヤチェーンを強みとするトヨタらしさ
が発揮できているということを伝えていました。
流石トヨタと思わせる記事でした。
震災地への産業誘致、産業育成
震災復興の中でも、ものづくりに関するニュースが気になります。
被災地の未来、製造業の未来を考える上で、気になった記事をふたつ紹介したいと思います。
震災10年目の現実 先送り国家「ニッポン」
日経ビジネス 2021.2.16 記事より
まさに怪奇 計画知る人も消えた福島南部「新産業計画」の今
10年前、西郷村には大規模な植物工場を建設する計画があった。
計画自体は「新産業を矢継ぎ早に集積し、世界から企業や人材を大量に呼び込む」という壮大なものだった。
第1の柱は、西郷村に建設する大規模な植物工場。水力や地熱をはじめ再生可能エネルギーをふんだんに使い、必要な電力はそれらで自給し、完全閉鎖型で野菜を育てる。第2の柱は最先端福祉事業。介護福祉施設や介護技術養成学校、介護ロボットの研究開発拠点などを設け、留学生らを積極的に受け入れるというものだ。
地方の課題まで解決する一大復興モデル
さらに下郷町では、町内にある温泉資源を活用し、“一大医療拠点”とすることを視野に入れる。狙いは海外からの「医療ツーリズム」の受け入れで、高齢者に限らず、多くの外国人観光客に長期滞在してもらえば、新たな雇用も確実に生まれる。そんなふれ込みだった。
大手外資系コンサルティング会社が旗振り役となり、日本を代表する電機メーカーや大手商社、介護大手など20社ほどが計画に賛同する意向を示したというこのプロジェクト。記事は「(日本の地方が抱える)高齢化や医療介護の問題を、エネルギー自給や新興国需要という軸も絡めて解決する視座はほかの地域の復興モデルにもなる」と結んでいる。
だが、震災から10年を迎える今、この壮大な計画はどこまで進んだのか両自治体に尋ねると、想像もしない答えが返ってきた。
どうやら計画は相当早い段階で白紙となり、何一つ実現に向けて動き出したものはない様子だ。大きな反対運動が起きたわけでもなく、自然消滅してしまったようだという。
計画が頓挫した理由は推測可能だ。キーワードはやはり、「規制」「国の動きの遅さ」「既得権益」である。
・・・
既得権益保護が日本の製造業を弱くしていくことを予感させる、象徴的なニュースでした。
震災では大変悲しいことが沢山起きて、産業も大きな打撃をうけました。
前と同じに戻るのではなく、新しいチャレンジでプラスに変えることが、災害の傷をいやすことにも、亡くなった方への手向けにもなる。
知恵を絞って工夫することで、産業を成長させてきた、日本人のものづくりに対する情熱や誇りと言った特徴が無くなってきていることを感じます。
災害に合った福島だからこそ、特区認定など一点突破で新しい産業を創出していって欲しい。人が集まり新たな生活基盤・街をつくっていって欲しいと願います。
二つ目のニュースはロボットテストフィールドです。
「菅流」の東北復興 グリーン成長重視、柱は自助 コロナ禍が影、五輪に不安
3/8(月) 時事通信 より抜粋
首相は今月6日、福島県南相馬市と浪江町に整備された研究開発拠点「福島ロボットテストフィールド」(RTF)や、太陽光発電で水を電気分解し、水素を製造する同町の「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」を視察。記者団に「今後も国が前面に立って福島復興の取り組みを行う、私の決意を示す意味で訪問した」と訴えた。
以前より、福島ロボットテストフィールドが気になっています。
今回、菅総理訪問が報じられましたが、報じ方が小さかったので紹介します。
福島ロボットテストフィールド
ホームページより抜粋
福島イノベーション・コースト構想に基づき整備された「福島ロボットテストフィールド(RTF)」は陸・海・空のフィールドロボットの一大開発実証拠点です。インフラや災害現場など実際の使用環境を再現しており、ロボットの性能評価や操縦訓練等ができる世界に類を見ない施設です。
本拠点は、南相馬市復興工業団地内の東西約1,000m、南北約500mの敷地内に「無人航空機エリア」、「インフラ点検・災害対応エリア」、「水中・水上ロボットエリア」、「開発基盤エリア」を設けるとともに、浪江町・棚塩産業団地内に長距離飛行試験のための滑走路を整備しております。2021年度に試験用プラントと試験用トンネルにおいて、ワールド・ロボット・サミット2020のインフラ・災害対応カテゴリー競技が開催されます。
国の支援を期待するだけでなく、アイデアや情報発信で産業を大きくすることを加速する必要があると思います
ロボティクスは将来、巨大産業になることが見えている分野です。
もっと注目を浴びていいし、注目を集めるような仕掛けや成果を矢継ぎ早に出していって欲しいと思います。
災害をきっかけに作られたという経緯もありますが、災害用ロボットだけでなく、よりビジネスよりの研究と製品化に期待したいです。
応援しています。いつか見学に行きたいです。
最後に
震災地の復興と言いますが、私がイメージするのはこうです。
比喩が適切かわかりませんが・・・
東京大空襲があり敗戦国となった日本が、その後、高度成長を果たしたように、その後、歴史を振り返った時に、日本が変わる大きな起点となるべきだと思うのです。
本当に甚大な被害です。この地から全く新しい未来の日本を創出しなければ、割に合わないと思うのです。
そこに暮らしていた人の思いは、きっと以前と同じになるだけでいい。ということかもしれません。
でも、亡くなった方、無くなった街並み、震災前と全く同じにはならないのだから・・・
何をしなければならないのか、考え行動しなければなりません。
まだ、復興は果たせていないのです。